日本のうなぎ養殖発祥の地として、125年以上の歴史を刻む浜名湖。その伝統を背負い、養鰻家(うなぎを育てる生産者)が手塩にかけて育てたうなぎが集まってくるのが、浜名湖養魚漁業協同組合の「販売部」です。ここで行われる活鰻(かつまん=生きた状態のうなぎ)の選別と出荷は、浜名湖うなぎの品質を決める大切な仕事です。うなぎを全国の問屋や専門店へと送り出すための、最も重要な最前線の拠点と言えます。
水しぶきが上がり、ベテランのスタッフたちが素早い手つきでうなぎを選別していく活気ある現場。そこで入社7年目を迎え、力強く、そして笑顔で作業をこなしているのがW.さんです。「漁協の仕事」や「職人の現場」と聞くと、つい無口できびしいイメージを持ちがちです。でも、彼が語る職場の本当の姿は、そのイメージを気持ちよく裏切るものでした。
なぜ彼はうなぎの世界に飛び込んだのか。毎日、生きたうなぎと向き合う中で、どんな成長を感じているのか。そして、体を動かす現場の作業では、チームワークと会話がどれほど大切にされているのか。うなぎへのまっすぐな愛情と、現場で働く誇りにあふれたW.さんのお話を、たっぷりとご紹介します。
第1章 忘れられない「学校の給食」。大好きな味のルーツを求めて
W.さんとうなぎの出会いは、少しユニークで、とても温かい記憶から始まります。「私がうなぎを大好きになったきっかけは、学生時代の『学校の給食』なんです」。
ふつう、うなぎといえば高級な食べ物で、特別な日やお店で食べるものというイメージが強いかもしれません。でも、うなぎの一大産地である浜松地域のまわりでは、地元産のうなぎが学校の給食に出ることがあります。地域の自慢を知ってもらうためです。「給食で出たうなぎが、もう本当に美味しくて。そこから『うなぎってこんなに美味しいんだ!』と感動して、うなぎという食べ物そのものが大好きになりました」。
この強い体験は、彼が将来の進路を考えるときにも大きく影響しました。「就職を考えたとき、自分が大好きなうなぎに関わる仕事がしたいと、自然に思うようになっていました。そして、浜松のうなぎを根っこから支えている漁協のことを知りました。ここで働きたいと強く願って、入社を決めました」。
給食という毎日の風景の中で出会った感動が、一人の若者を地元の伝統産業へと導いた。それは、組合が長い間この地域に根ざして「食べることの幸せ」を届けてきたからこそ生まれた、奇跡のようなご縁でした。大好きなうなぎに囲まれて働く——。W.さんの期待に胸をふくらませた社会人生活が、こうして始まったのです。
第2章 無口な職人現場のイメージを覆す、活発な「コミュニケーション」
W.さんが配属されたのは、販売部の販売課。生産者から運ばれてきた生きたうなぎ(活鰻)を受け取り、サイズや品質ごとに選別(より分けること)し、全国の取引先へ届けるためのトラックに積み込みます。まさに組合の「心臓部」とも言える部署です。
入社前、彼は漁協の現場に思い込みを持っていました。「『漁協』や『選別の現場』というと、みんなが黙って、一言もしゃべらずに、きびしい顔で作業をしているイメージがありました。職人さんの世界だから、無口で怖い人が多いのかなと、少し不安に思っていた部分もあったんです」。
しかし、いざ現場に入ってみると、そのイメージは見事に、そして良い意味で裏切られました。「実際は全く違いました。現場はむしろ会話が多くて、コミュニケーションがすごく活発なんです」。
活鰻の選別や出荷は、一人ではできない仕事です。次々に運び込まれるうなぎを、いい状態のまま素早く出荷しなければなりません。次にどのサイズのカゴを用意するのか、トラックにいつ積み込むのか——スタッフ同士の息のあった連携が欠かせません。「お互いに声を掛け合い、力を合わせて作業を進めるので、とてもチームワークが良い職場です。黙って一人で作業するのではなく、みんなで協力して一つの目標に向かう活気がある。それが私にとっては、すごく良いギャップでした」。
第3章 生きた命の力強さ。選別のスピードと判断力に見る「成長の実感」
販売課で働くいちばんの面白さは、何と言っても「生きたうなぎ(活鰻)」に直接触れられることです。「毎日、生きたうなぎを直接見られるのは、やっぱりこの現場ならではの魅力です。力強く動くうなぎを扱っていると、生き物を相手にしているんだなと実感します」。
でも、元気に動き回るうなぎを、サイズごとに一瞬で見分け、正しくカゴへ仕分けていく「選別」の作業は、決して簡単ではありません。うなぎは一匹ごとに太さも長さも違います。プロの取引先へ届けるには、決められた規格に合わせて素早く仕分ける職人の技が必要です。
「最初はやっぱり難しくて、うなぎの動きについていくのも大変でしたし、サイズの見極めにも時間がかかりました。でも、先輩たちが本当に丁寧に教えてくれたおかげで、少しずつコツを掴むことができました」。
毎日のくり返しと、先輩からのぴったりのアドバイス。それらを素直に吸収し続けた結果、W.さんは確かな手応えを感じるようになります。「今では、選別のスピードも目に見えて速くなりました。一瞬でサイズを判断する力も身につきました。大好きなうなぎに触れながら、自分の技術や判断力が上がっていくのを感じられる。それが私にとって大きな成長の喜びであり、仕事のやりがいになっています」。
最近では、組合が力を合わせて立ち上げた新ブランド「でしこ」のような、とても品質の高いうなぎも、この現場を通っていきます。きびしい基準を通ったトップクラスのうなぎを見極め、最高の状態で送り出す。彼が身につけた判断力は、浜名湖うなぎのブランドと品質を最前線で守る、頼もしい盾になっているのです。
第4章 体力仕事だからこそ生きる「思いやり」。自分に合ったやり方を見つける
活鰻の入荷・出荷やトラックへの積み込みなど、販売課の仕事はどうしても体を動かす場面が多くなります。水を含んだうなぎのカゴは重く、体への負担がまったくないとは言えません。W.さんにとって、そうした力仕事への不安はなかったのでしょうか。
「確かに体を使う仕事ですし、最初は大変だなと思うこともありました。でも、この職場には、一人ひとりの体格や体力に合わせた働き方を尊重してくれる、温かい思いやりがあるんです」。
力まかせに重いものを運ぶのではありません。体の使い方やカゴの持ち方、効率の良い動き方など、負担を減らすための工夫やコツが、この現場にはたくさん積み重なっています。「先輩たちが『こういう持ち方をすると腰に負担がかからないよ』『あなたの体格なら、このやり方の方がやりやすいよ』と、私に合ったやり方を一緒に考え、ていねいに教えてくれました。だから、無理をして体を壊すこともありませんし、安心して作業に取り組めています」。
一人ひとりの向き不向きを見極め、決して無理をさせない。この「人を大切にする社風」こそが、浜名湖養魚漁協全体の強みでもあります。有休が取りやすく、土日祝日が基本のお休み(活鰻の現場は年間休日122日・月平均残業5時間)という、とても良い職場環境が整っています。だから、体を動かしてしっかり働いた後は、自分の時間をたっぷり取って、ゆっくり休むことができます。「オンとオフの切り替えがしっかりできるので、毎日元気な状態で、また現場に立つことができるんです」。
第5章 未来の仲間へ。声を掛け合い、体を動かし、一緒に浜名湖の誇りを届けよう
入社から7年。給食のうなぎに感動した少年は、今や浜名湖うなぎの最前線を支える、頼もしい現場のプロへと成長しました。インタビューの最後に、これから組合で働きたいと考えている人へ、W.さんからのメッセージです。
「漁協の仕事というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、ここはまったく違います。チームで協力しながら、いつも声を掛け合って進める活気ある職場です。黙って机に向かうよりも、まわりの人とたくさん話しながら、体を動かして働きたい。そんな方には、これ以上ないくらいぴったりの環境だと思います」。
特別な経験や、最初から魚にくわしい知識を持っている必要はありません。「体を使う仕事ですが、先輩たちがその人に合ったやり方を優しく教えてくれるので心配いりません。私のように『うなぎが好き』という気持ちだけでも十分です。生きたうなぎの力強さに触れながら、少しずつ自分が成長していく楽しさを、ぜひ一緒に味わいましょう」。
全国の食卓へ、そして未来の子どもたちの給食へ。浜名湖の最高品質のうなぎを確実に届けるために、W.さんは今日も現場で明るく声を上げ、仲間と一緒にいきいきと働いています。あなたもこの活気あふれるチームの一員として、体を動かしながら「浜名湖の誇り」を全国へ届ける仕事に挑戦してみませんか。温かい仲間たちが、あなたの参加を心待ちにしています。